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「そういえば、このバスはどこへ向かうんですか?どこのスタジオ行きです?」
未だ席できゃっきゃとはしゃいでいるメンバーたちよりは幾分か冷静な最年長の
「はい……それでは……発車します……少々揺れたり……ガスが出ますので……ご注意ください……」
「ガス?それってどう……」
運転手の暗い声に疑問を問いかけた直後、アイドルたちへ向けて上の方からカラフルなガスが噴出された。孔雀緑、紅碧、赤、パウダーピンク、柑子、萌黄、紅血、チェリーピンク、淡藤、月白、とそれぞれのメンバーカラーを表すようだった。とても凝られている演出。だがこんな異常事態にそのことに触れられるわけがない。
「なにこれ!?」
「ド、ドッキリなのぉ!?なにも見えな……」
いきなりのガス噴射に戸惑うアイドルたち。だがその元気は長くはもたなかった。次第に脱力し、喋れなくなっていったメンバーを見て路望は必死の思いで口を開く。
「みんな、吸っちゃ、駄目だ……」
誰か一人でも無事でいてくれ、と願いを込めた懸命な言葉だった。だが紡いだ言葉は既に意識を失っているメンバーには響かず、ついには彼女も意識を失い、車内はすっかり静まった。先程まで席順のことできゃっきゃとはしゃいでいたアイドルたちはまさに儚さを身にまとっていた。このオフショットを寝ているだけだ、と文を付けてSNSへ投稿したらきっと可愛い、やら綺麗、やらのコメントですぐさま拡散されるだろう。今はその投稿する術もないのだが。
運転手は全員眠ったかを後ろを向いて確認する。その顔にはくすんだ緑色のガスマスクがつけられていた。しゅこー、しゅこー、とゲーム内でしか聞かないような音が鳴る。車内アナウンス用の無線を手に取り、誰にも聞かれないことを分かっていながら運転手はなにやら呟く。
「このバスは……エフェドル様専用です……行先は……地獄です……」
「さあ……張り切って行きましょう……!」
不敵に笑った運転手の声は確かに狂気を孕んでいた。そのままバスは出発し、運転手の言う”地獄”へと一歩ずつ進んでいるのであった。
アイドルたちが眠り、バスが発車した直後。入れ替わるかのように白いバスが駐車場へ入っていった。そう、本当に乗るべきだったのはこのバスだった。
この行き違いが、後に悲劇を生むことになるなんてマネージャーからスケジュールを告げられた時は誰も思っていなかった。
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晴(プロフ) - きゃらめる@ぱんけえきさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。今後ともあいです!をお楽しみいただけたら幸いです。 (3月29日 22時) (レス) id: f84a20cb2a (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめる@ぱんけえき - とっても面白いです!アイドルたちがデスゲームをするのはなかなかユニークなご企画ですね! (3月29日 21時) (レス) id: 9b744e7a21 (このIDを非表示/違反報告)
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