検索窓
今日:44 hit、昨日:67 hit、合計:11,227 hit

ページ ページ4

「そういえば、このバスはどこへ向かうんですか?どこのスタジオ行きです?」


未だ席できゃっきゃとはしゃいでいるメンバーたちよりは幾分か冷静な最年長の夜散桜(いみなし)(みお)が聞く。


「はい……それでは……発車します……少々揺れたり……ガスが出ますので……ご注意ください……」

「ガス?それってどう……」


 運転手の暗い声に疑問を問いかけた直後、アイドルたちへ向けて上の方からカラフルなガスが噴出された。孔雀緑、紅碧、赤、パウダーピンク、柑子、萌黄、紅血、チェリーピンク、淡藤、月白、とそれぞれのメンバーカラーを表すようだった。とても凝られている演出。だがこんな異常事態にそのことに触れられるわけがない。


「なにこれ!?」

「ド、ドッキリなのぉ!?なにも見えな……」


 いきなりのガス噴射に戸惑うアイドルたち。だがその元気は長くはもたなかった。次第に脱力し、喋れなくなっていったメンバーを見て路望は必死の思いで口を開く。


「みんな、吸っちゃ、駄目だ……」


 誰か一人でも無事でいてくれ、と願いを込めた懸命な言葉だった。だが紡いだ言葉は既に意識を失っているメンバーには響かず、ついには彼女も意識を失い、車内はすっかり静まった。先程まで席順のことできゃっきゃとはしゃいでいたアイドルたちはまさに儚さを身にまとっていた。このオフショットを寝ているだけだ、と文を付けてSNSへ投稿したらきっと可愛い、やら綺麗、やらのコメントですぐさま拡散されるだろう。今はその投稿する術もないのだが。

 運転手は全員眠ったかを後ろを向いて確認する。その顔にはくすんだ緑色のガスマスクがつけられていた。しゅこー、しゅこー、とゲーム内でしか聞かないような音が鳴る。車内アナウンス用の無線を手に取り、誰にも聞かれないことを分かっていながら運転手はなにやら呟く。


「このバスは……エフェドル様専用です……行先は……地獄です……」

「さあ……張り切って行きましょう……!」


 不敵に笑った運転手の声は確かに狂気を孕んでいた。そのままバスは出発し、運転手の言う”地獄”へと一歩ずつ進んでいるのであった。





 アイドルたちが眠り、バスが発車した直後。入れ替わるかのように白いバスが駐車場へ入っていった。そう、本当に乗るべきだったのはこのバスだった。

 この行き違いが、後に悲劇を生むことになるなんてマネージャーからスケジュールを告げられた時は誰も思っていなかった。

次ページ→←一章 照明は上からあいどるは下へ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (28 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
22人がお気に入り
設定タグ:募集企画 , 本編 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - きゃらめる@ぱんけえきさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。今後ともあいです!をお楽しみいただけたら幸いです。 (3月29日 22時) (レス) id: f84a20cb2a (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめる@ぱんけえき - とっても面白いです!アイドルたちがデスゲームをするのはなかなかユニークなご企画ですね! (3月29日 21時) (レス) id: 9b744e7a21 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作者ホームページ:無し  
作成日時:2024年1月13日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。