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「荒波の中では、藁をも掴めない。冷静さを欠いたから犠牲者が出たなんて……助かるはずだった命なんて生ませたくない。」


 それは、親友の死を受け止めるのに、なこの年齢は早すぎる事や、現状の意見、その他の感情を秤に掛けた末の判断であった。これが最善の判断なのだ、そうである……はずなのだ。揺らいでしまうそうな思いをどうにか冷静に保つ。どちらを助けるべきか、話し終えた澪はゆっくりと、ひなたの耳から手を離す。


「それと、あと一つ。」


 坐った目で、澪は一つ呼吸を置いた。これは、私がやらなければいけない。


「鍵は、私の手で開けるよ。勿論、私は結論に従う。今鍵を渡さなくても大丈夫。」


 人の生死を自らの手で決めるのは、きっと君たちには早いから。私は今、上手く表情を作れているだろうか。ちょっとでも油断したら、すぐに壊れてしまいそうな最年長としての仮面は、誰にもわからないうちにひっそりと崩れていった。





 耳から手を離されたひなたは情報が飲み込めなかった。誰かの声が聞こえて、でもそれが誰の声で、なんで言ったのかすらまともに飲み込めない。ただわかったのは、この空間に、またひとつ石が投下されたのだと。自分が何もわかっていないうちに、そしてそれを澪が、澪が行ったのだと。


「み、澪お姉ちゃん、何言ったんすか……?」


 そう縋るように、ただ、心の支えを求めるように。言ってほしかった。大丈夫だよとか、お姉さんがなんとかするからねとか、いつもみたいに。返事は返ってこない。ただ、少し、少しだけ。彼女は顔を歪め、ひなたの頭を慰めるように撫でた。その表情が、態度が、行為が、その全てが、彼女が”それ”をしたことを。澪が選択をしたことを示していた。

 ひなたはバカだ。バカでアホでグズで愚かで、でも、それでもなお、わかってしまう。どれだけ頭が悪いと揶揄われていても、この場の空気や、雰囲気で、なにがあったのか、それくらいは理解してしまう。ひなたの中で何かが決壊して、ぼろぼろと涙が溢れてくる。視界が歪んで、慌てて慰めようとかがみ、自分に視線を合わせてくれる澪の顔すらよく見えない。見えなくてよかったと、今は少し見たくないと、そう微かに思えてならない。


「なんっ、で。」


 ただ溢れた感情に流されるまま言葉が喉から流れ出てくる。言葉も涙も、溢れてこぼれる。大雨のように流れていく涙はやむことを知らないようだった。

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(プロフ) - きゃらめる@ぱんけえきさん» コメントありがとうございます。そう言ってもらえると嬉しいです。今後ともあいです!をお楽しみいただけたら幸いです。 (3月29日 22時) (レス) id: f84a20cb2a (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめる@ぱんけえき - とっても面白いです!アイドルたちがデスゲームをするのはなかなかユニークなご企画ですね! (3月29日 21時) (レス) id: 9b744e7a21 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作者ホームページ:無し  
作成日時:2024年1月13日 11時

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